マイホームを購入すると、毎年かかるランニングコストの一つに「固定資産税」があります。
税額は、建物の大きさや立地などによって異なりますが、意外と高く感じている方も少なくないようです。
これから家を取得する人のなかにも、固定資産税がいくらになるのか気になっている方がいらっしゃるかもしれません。
ここでは、税額の相場や計算方法、節税につながる軽減措置など、固定資産税の基本的な情報をまとめてお伝えします。
住宅の固定資産税とは
固定資産税とは、建物や土地といった不動産などの固定資産に課せられる地方税です。
税額は、その資産の評価額に応じて決まります。
戸建住宅の場合は、建物と土地の固定資産税をそれぞれ求め、その合計金額を納めます。
建物と土地をわけるのは、それぞれの評価額が年によって異なるためです。
たとえば建物の場合、経年劣化により築年数の古い家ほど資産価値は下がります。
このため、建物の固定資産税も古い建物ほど安くなる傾向があるのです。
一方、土地は古くなっても価値は変わりません。
むしろ、周辺環境の変化で人気が高まると価値が上がり、固定資産税が増える可能性もあります。
固定資産税の課税対象者は、毎年1月1日時点で資産を所有している人です。
ただし、不動産会社から物件を購入する際には、売主と買主で日割清算するケースが多く見られます。
たとえば、7月1日に物件を購入した場合、1月1日~6月30日までは売主が、7月1日~12月31日までは買主が負担するといった契約が通例です。
都市計画税を一緒に納める地域もある
不動産を購入すると、地域によっては「都市計画税」という税金が課せられるところもあります。
都市計画税とは、自治体の定める都市計画区域において、市街地を形成している区域などの土地に課される地方税です。
区域外の土地所有者には課せられませんが、区域内の方は、固定資産税と併せて納める必要があります。
都市計画税の税額は、固定資産税と同様に「固定資産税評価額」に一定の税率をかけて求められます。
税率は、自治体にもよりますが最大0.3%です。
固定資産税評価額については、後ほど詳しく説明しましょう。
固定資産税の計算方法と固定資産税評価額の目安の求め方
固定資産税は、「固定資産税評価額」に標準税率をかけて求めます。
標準税率は1.4%です。
仮に、固定資産税評価額が1,000万円の場合、その年に納める税額は14万円です。
なお、税率は自治体によって異なるところもあります。
さて、固定資産税の税額を知るには「固定資産税評価額」を知ることがポイントです。
すでにお住まいになっている新築分譲住宅や中古住宅であれば、自治体の税務課などで調べられます。
しかし、注文住宅や販売中の分譲住宅の場合、家が完成、または購入した後に専門調査員が建物の固定資産税評価額を決める調査を実施し、登記情報などを踏まえて評価額を決めます。
つまり、土地の評価額はわかっても建物の評価額は完成しないとわからないのです。
ただ、家の完成前であっても、ある程度の目安の評価額は想定できます。
ここで、新築住宅の固定資産税評価額の目安の求め方をお伝えしましょう。
新築住宅の固定資産税評価額の目安(建物分)
建物の固定資産税評価額の基本的な考え方は、「その家と同じ建物を建てたときに必要な費用」が目安の額とされます。
新築住宅の場合、家の建築費ということになりますが、実際には使用している建材や設備などの要素を元に、複雑な計算式を用いて算出されるため、建築費とは一致しません。
一般論ですが、建物の固定資産税評価額は「売買価格の7割くらい」が目安と言われます。
仮に、建物の売買価格が2,000万円なら、評価額は1,400万円くらいです。
これに税率の1.4%をかけた19.6万円が、建物分の固定資産税の目安になります。
なお、先ほどお伝えした通り、建物の評価額は築年数が古くなると下がります。
このため、建物の固定資産税も下がっていくのが通例です。
土地の固定資産税評価額の目安
土地の固定資産税評価額は、自治体の税務課などで調べられます。
ただ、土地の場合は「路線価(固定資産税路線価)」がわかれば、それに面積をかけるだけで簡単に求められます。
たとえば、1m2あたりの路線価が10万円、面積が150m2の土地の固定資産税評価額は、1,500万円です。これに税率1.4%をかけた21万円が、土地分の固定資産税になります。
ただし、土地の評価額は形状によって割引になる物件もあります。
たとえば、旗竿地(L字状の土地)や三角形の土地といった不整形地は、評価額を決定する際に減額されることがあります。
正確な額を知りたい方は、自治体の税務課などに問い合わせましょう。
また、一定の条件を満たす土地は評価額が6分の1に減額される軽減措置もあります。
軽減措置については、後ほど解説します。
住宅の固定資産税の平均相場
一般論として、戸建住宅の固定資産税はおおよそ10~15万円と言われます。
ただし、固定資産税は建物の大きさや立地など、さまざまな要件によって異なりますので、一概にはいえません。
とくに注文住宅は、建材や設備が一軒一軒異なりますので、実際に建ててからでなければわからないのが実情です。
一つの目安として、東京都が固定資産税と都市計画税の負担額について委託調査した結果(※)がありますので、こちらを参考に税額を見ていきましょう。
・東京23区:約22万円
・多摩地域:約16~21万円
・横浜市:約17~20万円
路線価の高い東京23区だと、固定資産税と都市計画税の合計額は約22万円と高額です。
ちなみに、土地1m2あたりの税額は、東京23区が約1,400円、横浜市は約800円、多摩地域は約750円だったそうです。
また、建物1m2当たりでは、東京23区が約980円、横浜市は約810円、多摩地域は約720円という調査結果になっています。
(※)参考:東京都主税局委託調査「東京都特別区と他都市との固定資産税負担等の実態比較調査 報告書(平成29年3月)」
住宅の固定資産税の支払い方法
毎年5月ごろになると、固定資産の所有者のもとに納税通知書と納付書が送られてきます。
これを、金融機関や税事務所の窓口、コンビニなどで納めるのが基本です。
なお、税額が大きいため一括払いだけでなく4期に分けて納める形式もあります。
最近では、クレジットカードや電子マネーで支払える自治体も増えており、カード払いでポイント還元が受けられるところもあるようです。
住宅の固定資産税の軽減措置について
固定資産税には、税額が安くなる軽減措置があります。
しかも、新築のみに適用される措置もありますから、これから新築のマイホームを取得される方はぜひ活用したいところです。
ここで、新築の戸建住宅における固定資産税の軽減措置を、建物と土地に分けて解説します。
建物に関する軽減措置
新築の場合、一定の条件を満たす建物の固定資産税が3年間、2分の1に減額されるという軽減措置があります。
なお、長期優良住宅の場合は5年間です。
この軽減措置が受けられる建物の条件は、以下の通りです。
・床面積50㎡以上、280m2以下の住宅
・減額は居住部分の120m2まで(120m2を超える部分は減額されない)
・土砂災害特別警戒区域等の区域外に建てること
なお、この軽減措置は2024年3月31日までの期限付きです。
土地に関する軽減措置
土地に関しては、新築・中古を問わず適用される軽減措置があります。
それが、「小規模宅地の特例」です。
こちらも、一定の条件を満たす土地に家を建てる(もしくは建っている)場合に、土地の固定資産税評価額が減額になるというものです。
この軽減措置が受けられる土地の条件は、以下の通りです。
・200m2以下の土地は、評価額が6分の1に減額
・200m2を超える土地は、200m2までは評価額が6分の1に、超えた部分は3分の1に減額
なお、土地の軽減措置に期限はありません。
軽減措置でどれくらい節税できる?
これらの軽減措置が適用された場合、固定資産税はどれくらい安くなるのでしょうか。
ここでシミュレーションをしてみます。
・建物の評価額:1,400万円(居住部分の面積は120m2以下)
・土地の評価額:1,500万円(土地の面積は200m2以下)
・税率:1.4%
上記の条件で通常の固定資産税を求めると、建物が19.6万円、土地が21万円で、合計40.6万円です。
軽減措置が適用されると、建物は9.8万円、土地は3.5万円となり、合計で13.3万円。
適用されない場合と比べて、約3分の1にまで納税額を抑えられます。
なお、4年目以降(長期優良住宅は6年目以降)は建物分の軽減措置が受けられなくなりますが、減価償却で評価額が安くなるため、建物の固定資産税は19.6万円より安くなります。
軽減措置を受けるには申請が必要
固定資産税の軽減措置を受けるには、自治体の担当窓口に申請が必要な場合があります。
新築長期優良住宅等の軽減措置は申請が必要になりますので、
「固定資産税住宅用地申告書」など所定の書類を作成の上、速やかに申請しましょう。
なお、申請には期限があり、新築の場合は建築した翌年1月31日までとなっています。
期限を過ぎると軽減措置が受けられなくなりますので、早めに申請されることをおすすめします。
まとめ
新居に住み始めてからの資金計画を検討する際、固定資産税を計画に入れ忘れている方も少なくないようです。
納税額は年間で数十万円と決して安くはありませんので、計画に含めておきましょう。
また、固定資産税は登記情報などをもとに自治体が納付通知書を作成しますので、特別な申請は必要ありません。
ただし、軽減措置を受けるには申請が必要な場合もあります。
何もしないと毎年十数万円も多く納税することになりますので、忘れないように申請しましょう。